■2010.12.01 共同通信版

リーダーズノート編集部編著「帰ってこいマーシー」薬物依存の啓発を

読んでくれますか? 獄中のマーシーへ。

マーシーこと田代まさしさんへのメッセージを集めて本を作る、ついては一言願いたい、という依頼がきた。引き受けた第一の理由は、仲介したのが、ずっとあなたの支援をしている雑誌「創(つくる)」の編集長、篠田博之さんだったことだ。あなたに限らず、人生で失敗した人に対する彼の心遣いは、仕事を越えたところがあって、周囲を動かす。

本には、75人の「著名人」と、千人以上のファンからのメッセージが詰まっていた。私はこう書いた。「ファンだった、と言ったら/『創』の篠田さんが連れてきてくれた。/初対面。素のマーシーはコチコチ。/そうだ、ギャグもいつもコチコチ大真面目、/だからおもしろかったんだ。/そのストレス、遵法で解消できれば吉。」

初対面が去年の夏、それから再会の機会もなく、メッセージを書き、出版されるや、またあなたは麻薬取締法違反容疑で逮捕されてしまった。本書にもにじみ出ているが、「前科者」に加担する出版に一役買うことには、みなそれなりの抵抗があったろう。私には、あなたが世の多くの「薬物中毒者」や「前科者」に比べれば「著名人」ゆえに恵まれている、そのことに抵抗があったけれども、それをおして加担した。だから感謝しろ、というのではさらさらない。ただ、これも縁、ひとこと言いたいだけだ。

逮捕されるあなたのやつれた姿をテレビで見て感じ入った。聞いてはいたが、薬物依存とは、かくも逃れがたいものなのだ、と。そして考えた。希代の天才コメディアン、ジョン・ベルーシは薬物依存で命を落とした。体当たりのコメディアンにはそれだけのストレスと依存傾向があるのだと思う。そこで、もうフツウのイイコへの復帰はやめて、今後は、薬物依存の恐怖を世に訴える、それに身をていしてはどうか。死ぬ気でやれば、それを強力なギャグでやれるのではないか。そしてそれには、単なる芸能界復帰とは違う意味がある、と思うのだけれど、どうだろう?

もう一度、この本読んで考えてみて。  (作家/中山千夏)